祝!ノーベル生理学・医学賞受賞 「イベルメクチン」とは?

あけましておめでとうございます!
みなさん楽しいお正月は過ごせましたでしょうか?(*^▽^*)
今年も一年かしの木動物病院をどうぞよろしくお願いいたします
ところで、昨年2015年ですが、振り返ってみればあっという間の1年でしたが印象深い出来事もたくさんある年でもありましたね!
その中でも一か月前にスウェーデンでの授賞式があった、日本人2人のノーベル賞受賞はまだ記憶に新しいですね。
特に、生理学・医学賞を受賞した大村智博士の発見した「イベルメクチン」はみなさんもよくご存じの犬フィラリア症の予防薬として、非常に大きな役割を担っています。
そこで今回は世界の人々と動物の健康に貢献する薬「イベルメクチン」と犬フィラリア症の歴史について説明します。

○イベルメクチン製剤の登場前、犬の半数近くが犬フィラリア症に感染していた

今でこそ、犬を飼育していれば蚊の発生時期に犬フィラリア症の予防をするのは当たり前になっていますが、イベルメクチン製剤の発売される1987年以前はそうではありませんでした(意外と最近で驚きました!)。
まず、犬フィラリアは心臓の右心室から肺動脈に寄生します。最初にみられる症状は咳で、その原因は肺のうっ血(血管が詰まり、血流が停滞してしまうこと)やアレルギー反応です。症状が進むと、運動や散歩を嫌がったり、肝機能の低下や貧血になったりします。そのため慢性型では肝硬変を起こして、腹水が溜まる様子が見られます
一方急性型と呼ばれるものがあり、犬フィラリアが大動脈に詰まって全身の血液がうまく流れなくなり、赤血球も壊れてひどい貧血を起こします。急性症の犬では急激に赤血球が壊れて、尿中へヘモグロビンが出てくるため、ビール泡のような色の尿が出ます
予防薬登場前の犬フィラリアの感染率は直接塗抹法(微量の血液をスライドガラスに塗り付け、顕微鏡でミクロフィラリアを確認する方法)で調べると九州の田舎で45~50%、調査方法は違いますが、同じころの関東地区の感染率が89%だったという研究もありました。

○フィラリア予防の普及で、犬の寿命の延びに貢献したイベルメクチン製剤

関連については疫学調査・詳細な解析をしなければ正確なことは言えませんが)1986年における犬の平均寿命は6.5歳、1987年のイベルメクチン製剤の販売を経て、2009年には平均15.1歳にまで伸びた、また、イベルメクチン製剤の販売と時期をほぼ同じくして犬の死亡原因として多かった寄生虫感染も大きく減少しているというデータがあります。
イベルメクチン製剤登場前にも犬フィラリアを完全予防できる薬がありましたが、毎日投与する必要があった為あまり飼い主さんたちに浸透していかなかった、という意見がありました。
一方イベルメクチン製剤は月1回、1カ月間隔で投与すれば良くなり、毎日投与のわずらわしさも犬フィラリア症予防普及の障害になっていたようなので、画期的な犬フィラリア予防薬として世間に広まっていきました。

○人体薬として「顧みられない熱帯病」の撲滅・抑制に寄与するイベルメクチン

「顧みられない熱帯病」とは・・・
熱帯地域の貧困層を中心に蔓延している寄生虫・細菌・ウイルスによる感染症のこと。
先進国ではほとんど患者がいなかった為、あまり関心が向けられず十分な対策がとられていなかった。


大村智博士が、イベルメクチンの開発によってアフリカや中南米などの寄生虫による風土病のオンコセルカ症(河川盲目症:黒バエが媒介する世界上位の失明原因になっている寄生虫症。黒バエが流れの速い河川で繁殖することからこの名称がついた)に苦しむ人々を救った功績などが評価され、ノーベル生理学・医学賞を受賞されました。
イベルメクチン製剤は動物の世界でも抗寄生虫薬として普及しました。
日本でも犬フィラリア予防薬として販売が開始された1987年に人体薬としての承認を得ています。
世界保健機関(WHO)によってオンコセルカ症撲滅のため黒バエの駆除が行われてきましたが、抜本的な解決にはなりませんでした。そこでイベルメクチンの登場によって人の血液中のミクロフィラリアを殺すことで、黒バエへのミクロフィラリアの供給が抑えられ、現在では減少傾向にあり、大きな成果を上げています。
WHOは2020年までにオンコセルカ症を含めた10の「顧みられない熱帯病」撲滅・抑制に向けた取り組みを加速すると宣言しています。
日本で元になるものが見つかったイベルメクチンですが(ちなみに元になった菌は、静岡県伊豆半島のゴルフ場の近くで見つけたそうです)、それが今世界中の人や動物たちの健康に貢献しているということはとても素晴らしいことですね!

イベルメクチンは、1988年から人体薬として無償提供され、顧みられない熱帯病のオンコセルカ症の他に疥癬の治療薬としても広く使われ、世界で毎年2億人以上の人々の健康に貢献しています。
一方で、愛犬家たちの間では”犬たちをフィラリアから守ってくれた”ということでもう一つのノーベル賞ものだという声を聞きます。かつて犬の多くは、フィラリアに感染して最期を迎えていました。こうした声は、犬を愛する人たちの感謝の表れではないでしょうか。

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南大沢4-2-4
動物取扱業種別 保管
動物取扱責任者 冨永律子
登録番号
第102045号
登録年月日
平成22年11月15日
登録有効期間 平成32年11月14日